第7章 偶然か、必然か
僕は愛衣と沢山の話をした。
まずは僕の事について。
小、中、と学校を卒業し、今年から烏野高校に入学したこと。
小学校から続けていたバレーで、部活に入部したこと。
それから、ナルコレプシーのこと。
何故だか愛衣にはすべて打ち明けられる気がして、不思議にすらすら口が動く。
普通とは違ってしまったことを、そのゆく当てのないむなしさを、この子ならわかってくれるようだった。
愛衣は、ときおり相槌を打って僕の話をただじっと聞いてくれていて、
そしてそんな時間が、疲れ切った自分に安らぎを与えてくれているように感じた。
愛衣も愛衣で、少しずつ、少しずつ、自分の話をした。
転校してからは父の実家で生活し、毎日暴力や罵声に怯えながら暮らしていること。
そんな現実から逃げるように自傷行為をして、そのたびに自分が嫌になり、
何度も何度も、死のうと思ったこと。
僕が、もう少し早く君に会えていたら、
ひょっとしてその腕の傷も、無かったんじゃないのか?
考えても意味の無いような事なのに、そればかりが頭について離れなかった。
そして、僕は流れるように愛衣の手に指を絡ませて、静かに肩に顔を寄せる。
はりつめていた気持ちが一気に緩んでいく。
『おやすみ、蛍くん』
愛衣はそう言って、眠りに落ちる僕に体温を分けつづけた。