第5章 あの子は誰だ
目を開けると、僕はリビングのソファに寝ていた。
誰かがブランケットをかけてくれていたようだ。
僕の病気の発作について、家族の理解がある程度進んだのか、いまは突然眠っても家族がそんなに慌てることはなくなった。
「起きた?」
「うん…」
「気分はどう?」
「普通…かな」
「普通、っと。おっけー、リズム表も書いたしバッチリね」
母がさらさらと紙にペンを走らせて、
僕の方を見るとにこっと笑った。
「母さん。聞きたいことがあるんだ。
さっき寝ちゃって、聞けなかったこと。
西堂愛衣について。」
「…愛衣ちゃんのこと?いいけど…」
一呼吸置き、母は、あの子…もとい西堂愛衣についてを話し始める。
「あの子ね、家庭が複雑なの。お母さんは離婚して家を出ていって、お父さんも…一度お会いしたことはあるけど、その。あまりいい雰囲気ではなかったわ。」
「…(つまりなにかしらの問題があったってことか)」
「蛍とは、同じ幼稚園だったでしょ?それで、よく愛衣ちゃんと一緒に遊んでいるって、幼稚園の先生は言ってらしたわ。」
母はそう言うと、
アルバムのページを数枚めくってみせた。
「これは、遠足の日。これは、幼稚園の遊具で遊んでいる蛍と愛衣ちゃん」
写真を見る度、忘れていた声が蘇る。
ああそうだ。僕はこの子と会っていた。
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