第3章 変わってゆく
「もしもし、山口。今休み時間だよね?ちょっといい?」
『ツッキィィィ!!!大丈夫なの!?!?超心配でっ、俺っ!!!』
「山口うるさい」
『ごめんツッキー!!!』
呆れつつも、
こんな時だから、電話の向こうのうるさいあいつが
なんだか少し安心感を与えてくれるが、
それを認めたくなくて話を切り出した。
「昨日、僕が部活休んだ時、話してくれてありがとう。助かったよ」
『!うんっ!気にしないで!』
「それと……」
言おうか、言うまいか?
でもきっと山口なら、僕のことは理解してくれる。
言うべき、だろうか。
『…?ツッキー?だんまりしてどうしたの?』
「僕、実は……」
…言いかけると、電話の向こうでチャイムが鳴った。
『あ、ごめんツッキー!もう予鈴鳴っちゃった……』
「……そう。なんでもないよ。授業頑張って」
『ありがとう!それじゃまた連絡してね!!』
電話がプツリと切れる。ああ、言えなかったな。
久しぶりに聞く親しい人物の声に、何かを感じることすらできなかった。
「……ッ!!」
途端に、ズキン、と鈍い痛みが頭に走って、携帯が僕の手から床に滑り落ちた。
これは…きっと…
(居眠りの発作だ……)
眠気に抗えず閉じていく瞼の裏で、
かすかに僕を呼ぶ声がする。
『月島くん』
「……愛衣……」
『やっと、私の名前を呼んでくれたね』
その声が届くと次には、もう深い眠りに落ちていた。
・・・・・