第2章 いつもと違う世界
「結論から言いますと、蛍くんにはナルコレプシーの疑いがあります」
「ナルコ、レプシー……?」
朝の慌ただしさが落ち着いた頃、
面会に来た母と僕は揃って診察室に通され、
医師の話を聞いていた。
聞いたことも無い病名に、僕達はただ呆然とするばかりで。
そんな僕らに構わず、医者は話を続ける。
「ナルコレプシーというのは、突発的に強い眠りに襲われて、何処ででも寝てしまうという病気です。」
僕は医者の言葉を遮るようにして問いかけた。
「あのっ。僕は今まで…突然眠るなんてこと、無かったんですけど。」
「この病気は、突然、起こることがあってね。風邪などがきっかけということもあって。」
「風邪…?あっ!」
そこで、一昨日の夕方、ひどい熱にうなされていたことを思い出した。
「あの風邪で……もしかして……ってこと?」
「可能性も、ないとは言いきれません。今後の蛍くんの観察の結果にもよりますが……今はまだ……何も分からない、という状態でありまして……我々も力を尽くそうとは思います」
「……。」
「他に、なにかご質問は?」
(質問なんて……)
…と、少し投げやりになったところで、
数日の心の引っ掛かりである、夢の事を思い出した。
病気に関係あるかどうかも分からないが、とりあえず話を切り出す。
「変な夢を見るんですけど。関係していますか?」
すると医者は目付きを変えて、少し悩んだ後…詳細を求めてこう言った。
「その件、詳しくお聞かせ願えますか」