第1章 仇【進撃の巨人/リヴァイ】
「……いや、ここで寝なくてもいいのでは?」
「黙って抱かれてろ」
「あっ、はい」
余程疲れていたのか、すぐに規則正しい寝息が聞こえてきた。なんか一緒に寝るのも癪なので、腕の中から退散しようとしたが、ガッチリとホールドされていて離れる事が出来ない。抱きしめられるのが嫌と感じられない自分の変化に気付きたくなかった。
嫌でも気持ちが落ち着いてしまう。無事でよかったと思ってしまう。そして、体の芯が熱くなっていく。知りたくなかった気持ちがどんどん膨らむ。
何だかぐっすり眠れそうな気がして目を閉じる。
ケニーを礼拝堂から脱出させ近くの木にもたれさせた。きっともう助からない事は見て分かった。せめて綺麗な表情で逝かせてあげたくてハンカチを濡らしに行って、戻ったら目の前にリヴァイが居た。大事な話をしているんだろう、と思い距離を取ろうとしたが、ケニーに呼ばれて近くへ行った。ケニーの顔をハンカチで拭きながら話を聞く。その時に、リヴァイがケニーの甥である事も知ってしまった。
――コイツの事を頼まれてくれねえか?――
それが、最期の言葉になった。
頬に温もりを感じて目を覚ます。知らない間に涙が流れていたのを、リヴァイが手で拭ったのだと気付く。気持ちよくと身を捩る。朝なのかな?
「おはよう」
完全に無意識だった。私は驚いてリヴァイから距離を取ろうとするが、寝る前よりもキツク抱きしめられて離れる事は出来なかった。
「おはよう。こういうのも悪くねえな」
悔しいが同意だ。顔を見られたくなくてリヴァイの胸に顔を埋めた。頭を撫でる手が暖かい。悔しいが気持ちいいと感じてしまう。