第4章 花【進撃の巨人/エルヴィン】
「生殖機能の無い巨人がどうやって数を増やしたのかを考えた事があります。生殖機能が無いにも関わらず、彼らは何百と存在している。それはつまり、人工的に増やされているのでは無いか、と。人工的に増やされているなら、私たちの知らない人類や技術が存在する、と仮定するべきだと思います」
「壁外で巨人との交戦を避ける為にどうしたらいいと思う?」
「索敵範囲を広げるしか無いと思います。巨人を発見したら何らかの方法で知らせる。それを元に進む進路を変更します。ただ、長距離を索敵するので、人員が必要となります。また雨天等の視界が悪くなると索敵範囲を縮小せざるを得ないのが弱点です」
「知性のある巨人を捕らえる為にはどうする?」
「罠を設置し、兵士を囮にして罠まで誘導します。ですが、知性があるならば罠等力づくで排除されます。なので、罠はただの時間稼ぎです。時間稼ぎをしているうちに、手と足が使えないようにしないといけません」
エルヴィンと思考が一致していた。長距離索敵陣形、この世界の謎、そして次の壁外調査で行う作戦。少女は幼いながらエルヴィンの求める答えを正確に返した。
少女は調査兵団に必要。そう認識するまで時間はかからなかった。
「」
「はい」
「奴隷ではなく、仲間として調査兵団に入ってほしい」
仲間。その言葉の意味に辿り着くのに時間がかかった。
「もう奴隷をしなくていい。調査兵団に入れば、衣食住を得られる。その知識を使って給料も与えられる。その代わり、君の命は私がもらう」
「あの……エルヴィン様にメリットが無いように思えるのですが……? その、性欲処理はもちろんさせて頂きますが……」
「いや、しなくていい。ただ私の傍で知恵を貸してくれればいい」
「それだけではエルヴィン様にメリットが少なすぎます」
「それは君の働き次第だよ」
エルヴィンはそう告げるとの頭を撫でた。敷き布団を握りしめたままだった手を優しく解き指を絡める。そのまま自分の方へ引き寄せ、の左手の甲へ口付けた。その意味を知っているは顔を真っ赤にする。
それが、と調査兵団の出会い。そして、運命の歯車が回り始めた瞬間。
はゆっくりと頷き、消え入りそうな声で「よろしくおねがいします」と告げるとエルヴィンはを抱きしめた。