第4章 花【進撃の巨人/エルヴィン】
「エルヴィンが名前を付けてあげなよ」
ハンジがエルヴィンに声をかけた。エルヴィンは少女からハンジに視線を移す。
「私が? ハンジの方がこういうのは得意だろう?」
「いいからいいから!」
どこか楽し気なハンジ。
エルヴィンは再び少女へ視線を戻した。身長一四〇センチ程度の痩せ型。腰まで届きそうな長い髪。不思議そうにエルヴィンを見つめる真っすぐな瞳。
「……」
ふと脳裏に過った名前を呟く。暖かい風が室内に吹き抜ける。
「なんてどうだ?」
「。かしこまりました。本日よりと名乗らせて頂きます」
「ああ。私はエルヴィン・スミスという」
「エルヴィン様。私は今日からエルヴィン様の奴隷でしょうか?」
いつものように言っただけで、二人が息を飲んだことが分かった。少女はその空気に耐えられず体を無理やり動かして土下座しようとするが、慌てたハンジによってベッドに寝かされる。
「ハンジ。しばらく二人にしてくれないか?」
「……分かった。また後で来るね」
「かしこまりました。行ってらっしゃいませハンジ様」
ハンジは笑顔を崩さないように気を付けながら部屋を後にした。
エルヴィンは近くにあった椅子をベッドサイドに運びそこに腰掛けた。しばらく静寂が流れる。
「君は、壁の外に何があると思う?」
「……たくさんの国と人がいると思います」
「何故そう思う?」