第4章 花【進撃の巨人/エルヴィン】
少女は慌てて縮こまりながら上手く動かない体を動かして土下座しようとする。それを茶髪の兵士が慌てて抱きしめて止めた。
「大丈夫! 謝らなくていいんだよ。大丈夫大丈夫」
子供をあやすようにゆっくりと頭を撫でながら背中を優しくポンポンと叩く。それに安心したのか少女の体が震えを小さくさせていく。
「ここは病室だよ。酷い事は何もしないけど、貴方の体を少し確認してもいいかな?」
耳元で可能な限り優しく諭すと、少女はゆっくり頷いて服を脱ぎだした。下着まで取ろうとするので、兵士が慌てて下着を付けなおした。頭を傾げて不思議そうに兵士を見る少女。兵士にとって、彼女がどのような環境に居たのかを理解させるのに十分だった。
医者と兵士が入れ替わり、少女の体を隅々まで確認する。潰された目は完全に機能を失っており、眼帯が外せる事は無い。痛々しい痣は消えないが、それ以外の傷は回復傾向で、一か月もすれば包帯が完全に取れるとの見通しだった。
医者と看護師が病室の外へ出る。
「私は、調査兵団のハンジ・ゾエ。あなた名前は?」
「ノイン(九番)と呼ばれていました」
「……それは、本当に貴方の名前なの?」
「ノイン(九番)は私しかおりません」
ハンジは言葉を詰まらせた。劣悪な環境で育てられてしまった少女に、どう言えばいいかが咄嗟に浮かばない。
「年齢は?」
「十四だと聞かされております」
「好きなものは?」
「精え」「ちょっと待った!!」
心のケアというよりも、日常生活をしたことが無いのか、仕事の受け答えしか教えられていない。
ハンジの声に粗相をしたと勘違いした少女は、慌てて土下座をしようとし、ハンジが再び全力で止めた。