第3章 万事屋銀ちゃん
殴られた頬を押さえてツッコむ銀時に、神楽は侮蔑を込めた冷ややかな視線を向ける。
「そんな子に育てた覚えないアル」
「俺だって、お前に育てられた覚えねェよっ!」
「私だって育てた覚えないアルよ!!じゃあ私、関係ないアル!」
「何だそれ!何だこの不毛な争い!」
銀時と神楽のやり取りを見ていた遼は、思わずぷっと吹き出す。
「テメッ、笑うな遼っ!」
「ごめん、何か楽しそうだなって思って」
「眼科行ってこい」
三人がそんなボケだかマジだか天然だかわからないやり取りをしていると、痺れを切らした新八が玄関にやって来た。
「銀さんも神楽ちゃんも、夜中に玄関先で騒がないで下さいよ。また近所に文句…──」
「神楽と同じ反応すんじゃねぇよ」
遼を目に止めて硬直している新八に、銀時はいかにも怠そうに頭を掻く。
「こいつは店のねぇちゃんじゃねぇぞ。遼、挨拶」
「あ。初めまして、神武遼です」
「あ、どうも。志村新八です」
ぺこりと頭を下げる遼につられ、新八も自己紹介をする。
「私は神楽ネ。結局遼は銀ちゃんとはどういう関係アルか?」
「どういう関係…?」
答えに困った遼は、銀時を見上げる。
しかし、銀時にも二人の関係を明確に表す……相応しいと言える言葉が見つからず、がりがりと頭を掻いた。
「まぁ、なんつーか…妹、みたいなもんか?」
「それが一番近いかもね」
同意した遼の頭を、銀時はぐしゃぐしゃと撫でる。
「わっ。どしたの?」
「別に~。じゃ、上がれよ」
「あ、じゃあ僕お茶用意してきます」
ぱたぱたと部屋に戻って行く新八と、腹を掻きながらも遼の荷物を持って居間に向かう銀時の背中を、遼は何とはなしに見つめる。
「酢昆布は好きアルか?」
「へ?」
唐突に掛けられた質問に、遼はキョトンとした顔で神楽を見た。
神楽はニコニコと遼の答えを待っている。
「えっと…好きだよ。基本的に食べられない物無いし」
素直にそう答えた遼に、神楽は表情を輝かせる。
「神楽ちゃん、酢昆布が好きなの?」
「当然アル!あの酸っぱい匂いがクセになるヨ!それに、酢昆布好きな人に悪い人いないネ」