第11章 閑話休題
屯所に戻った遼は、控室に置いている予備の隊服に着替えると、沖田と共に局長室に向かう。
「あれ、聴取じゃなかったんですか?」
「その前に、近藤さんに報告しなきゃなんねぇだろ」
「あぁ、そうですね」
素直に納得する遼に呆れつつ、局長室の前に来た沖田は中に居る近藤に声をかけて入室する。
「近藤さん、つれてきやしたぜ」
「おお。遼ちゃん、今日は災難だったな。怪我の具合はどうだい?」
「は、はい。ご迷惑をおかけしました。刀で切られた傷はあまり深くなかったので、問題ありません」
「刀傷?
え、遼ちゃん、軽い怪我だって聞いてたんだけど……」
「えっと……背中を一か所と、首を二か所ですね」
微妙に噛み合わない話に、二人は沖田の方を見た。
「総悟、遼ちゃんが事件に巻き込まれて軽い怪我をしたって言ってたよな」
「強盗犯に人質にされて、背中と首を切られてやした」
「えっ、ええぇぇぇっっ!?
ちょっ、総悟っ、いやっ、遼ちゃん、大丈夫なのかい!?」
状況を理解して慌て始めた近藤に、沖田は「近藤さんは心配しすぎですぜ」と溜息をつく。
「あ、あのっ、私は本当に大丈夫ですから。傷も、もう出血はしていませんし」
「いやいやいや、出血してないって言っても、遼ちゃんは女の子なんだよ。傷跡が残ったりしたら」
本気で心配する近藤に、遼は相好を崩した。その様子に気付いた沖田は、呆れた様子で遼の背中を小突いた。
「にやにやすんな。気持ちわりぃ」
「にやにやなんて…え、してました?」
慌てて頬に手を当てた遼を、沖田は軽く睨みつける。
「してた。近藤さんに甘えるばっかりしやがって」
「い、良いじゃないですか、ちょっとくらい」
「総悟、遼ちゃんに意地悪ばっかりしてると嫌われるぞ。それに、今日は遼ちゃんは怪我人なんだから、ちゃんと優しくしてあげなさい」
「怪我人ったって、もうピンピンしてやすぜ。それに、こいつは甘やかしたら調子に乗ってまたドジ踏みやす」
鋭い指摘に、遼は反論できずに「うっ」と息を飲んだ。
二人の様子に近藤はやれやれと肩を竦めると、遼の頭をよしよしと撫でる。