第11章 閑話休題
何かを誤魔化すようにへらっと笑った遼に、新八と神楽は目を合わせると一つ頷いて、神楽が遼を横抱きに抱き上げる。
「神楽ちゃん?」
「遼は私が病院に連れて行くアル。銀ちゃん、後は任せたネ。新八、行くアルよ」
「ああ、ちょっと待ってよ神楽ちゃん!」
走り出した神楽を追って、新八も慌てて後を追う。置いてきぼりを食らった銀時は、やれやれと肩を竦めると、沖田に現状を伝えた。
「後始末はテメェらの仕事だ。遼はちゃんと送り届けるから、安心しろ」
「過保護ですねぇ。自分で巣に帰るくらい一人でできやすぜ」
「……巣、ねぇ」
自嘲気味に笑った銀時に、沖田は首を傾げるが、その疑問は現場に到着した大江戸警察によって有耶無耶になる。
事後処理や何やかやで沖田が手を取られている内に、銀時は神楽たちを追って病院へ向かった。
病院で治療を受けた遼は、結局軽い手当で終わり、新八や神楽と共にロビーの椅子に腰かけて会計を待っていた。そこにふらりとやってきた銀時は、「大丈夫か」と遼の様子を窺う。
「うん、大丈夫だよ。傷よりも、着物のクリーニングの方が心配」
「そんなもん、警察にでも請求しとけ」
「そうアル。ついでに色々ふんだくったらいいネ」
「ありがとう。そうするよ」
苦笑しつつ答えた遼は、受付に名前を呼ばれて向かっていった。
遼が十分に離れたのを確認すると、新八は銀時に近付き耳打ちする。
「銀さん、遼さんの傷なんですが……お医者さんに、「傷が浅すぎる」と言われました」
「どういうことだ?」
「僕も良くはわかりません。ただ、遼さんは何かを隠そうとしています」
確信めいた言い方をする新八に、銀時は少し驚いた。銀時が思っているよりも新八は遼をよく見ている。そして、理解しようとしていた。
本人が気づいているのかはわからないが、そこにはきっと恋心が潜んでいる。
「銀さん、聞いてます?」
「ん、ああ。まぁ、アイツもその内話す気になんだろ。踏み込めない領域なんて、誰にだってあるんだから」
銀時の言葉に、新八は「そうですね」と項垂れた。何もできないのは最初から分かっていたが、こうやって銀時からも一線を引かれると、やはり少しだけ悲しいものがある。