第7章 何でカタカナの名前?
数日後、万事屋を訪れた遼は桂と遭遇し、真選組入隊までの顛末を語った。
「というわけで、午後二時四十三分、桂小太郎、爆発物不法所持で逮捕」
「え?」
「副長にね、攘夷浪士の一人や二人捕まえて来いって言われてるの。協力してくれるよね?」
「えぇぇぇっッッ?!ちょっ、遼、協力って?!」
遼は桂の手首に掛けた手錠のロックを確認すると、にこりと笑う。
「大丈夫大丈夫。ちょっと取り調べするだけだから。痛くないから。多分」
「ホテル前のカップルかお前らは」
「ホテルだと!そんなふしだらな!!」
「ホテルじゃないよ。行くのは真選組の屯所だから」
「イく!?遼、こんな所で何を言い出すんだ!!?」
「テメーが何を言い出すんだ」
桂を蹴り飛ばし、銀時は遼に「本当にこのバカを連れて行くのか」と確認する。
「心配しなくても大丈夫だよ。程々に取り調べたら、うまく逃げれるようにするから」
「遼、それでバレたらどうするんだ?」
「……強めに殴る?」
「それで解決する世界なんて存在しねぇからな」
「冗談だよ。人間、そう簡単に記憶なんて無くさないからね」
笑った遼に、銀時は「そうでもないけどな」と呟いて、必死で手錠を外そうとしている桂をどついた。
「さっさと鍵開けてもらえ」
「ごめんね、ヅラ。ちょっと貸して」
「ヅラじゃない桂だ。ああ、すまんな」
遼は外した手錠を腰にしまうと、刀を差し直す。
「似合わねぇな」
「隊服の事?
それ、ヅラにも言われたよ」
「いや、その腰に差したやつ」
「武装警察だからね。剣術は得意じゃないから、いつも副長に叱られちゃうけど」
そう言って笑う遼の姿はすっかり真選組の隊士じみていて、銀時も桂も複雑な思いに囚われた。
ただの少女として過ごす人生を捨てて、遼は茨の道を選んで歩き始めている。
「あんまり無理するなよ。嫌になったら辞めればいいし、」
「遼なら、いつでも攘夷志士として歓迎するぞ」
「アホか。遼を犯罪者にしてどうするんだよ」
銀時の言葉尻を奪って勧誘する桂に、銀時はばしりと一撃を与えた。