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私が好きになったのは熊みたいな人でした

第4章 竜


真剣な顔で扉から入って来た副団長さんは、周囲を見回して私とリリアンに目をとめた。

「さんはどちらですか?!」

私は名前を呼ばれて椅子から立ち上がった。さっきから不安に心臓が鳴りっぱなしだ。

「…私です」

私と目が合った副団長さんは、何処か申し訳なさそうに眉を下げたあと、扉へと声をかけた。

「こちらへ運んで下さい!」

──運ぶ?何を?

ドクドクと全身が心臓になってしまったみたい。私は立ち尽くしたまま、騎士の人に支えられて扉から入って来る人を見詰めていた。


「っ!?グレンさんっ!」

ぐったりと、荒い呼吸で目を閉じているその人物が彼だとわかった途端、私は走り出していた。

「グレンさん!!」

名前を呼んでも反応が無く、近くで見ると苦しいのか額に汗が浮かんでいた。
グレンさんを支えていた騎士が、グレンさんを丁寧に床へと降ろした。意識の無いグレンさんは床で仰向けになり苦しそうにしている。

「毒を受けたのですが…その、どうしてもさんに会いたいと言われまして…」

副団長さんが、悔しそうに唇を噛んだ。何でそんな顔をするんですか?不安になって周囲の人を見ると、皆が私から申し訳なさそうに視線を外した。

「あ、あの、何で…皆さん、そんな顔をするんですか?」

グレンさんを運んで来た騎士のマルクさんの目にじわりと涙が浮かび、それを誤魔化すように頭を下げたのを見てしまった。嫌な予感に手が震え出す。

「毒と言っても、解毒薬、あ、有るんです、よね?」

声まで震え始める。

「さん…」

「解毒薬を早く、早くグレンさんにあげて下さい!す、凄く苦しそうで…早く…」

グレンさんの傍に膝をつき、苦しそうなグレンさんに抱き着いた。堪えきれなくてポロポロと涙があふれ出す。

「さん、すいません…解毒薬は、無いんです…」

「…なん、で…」

「解毒薬を作るには、とても貴重な植物が必要なんです。その植物はとても珍しく一本で城を買えてしまうくらい高価なのですよ。それに、今からそれを手に入れようとしても…」

この街でそれを持っている人は…、と言われて頭の中が真っ白になった。

「う、そ…嘘、ですよね?グレンさん…目を開けて下さい、グレンさっ…う、うぅ…」

グレンさんの顔を覗き込んだ。涙がポトポトとグレンさんの顔に落ちた。
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