第1章 戦いの後
「止められなかったんです。しのぶ様のお覚悟を聞いた時。必ず帰ってきてほしいだなんて言えなかった。そんな資格無いと思いました、、、。だけど本当は、、、っ!」
アオイの手に力がこもる。
「本当は帰ってきてほしかった、、、!ずっとずっとこの場所でいられたらと何度も思っていた!戦いが終わった先も皆で笑って過ごせたらどんなに嬉しいかと」
アオイの体は震えていた。それが悲しさになのか、悔しさになのか、怒りになのか俺には分からなかった。
ただ俺はその小さな体をできるだけそっと抱きしめた。
温かな涙が肩を濡らす。乱れた呼吸が胸に響いた。
「最後にもう一度一目でいいから会いたかった!帰ってきたら伝えたいことがたくさんあった!帰ってきたら、、、姉さん、おかえりなさいと言って、たくさんたくさん、、、っ」
「、、、あぁ、、、そうだよな」
次に会った時に言おうと思っていたこと。聞こうと思っていたこと。
その次が突然無くなってしまうことを俺達は知っていたはずなのに。
好きな人とずっと同じ場所にいられることが、どんなに幸せなことか俺達は。
「好きなだけ泣けよ。、、、俺の体、貸してやる。こうしてれば誰にも聞こえねェだろ?」
そんな事をもう二度と繰り返さないように。
この手を離さないように。
「うっ、、、ううっ、、、」
雲一つ無い夜空に浮かぶ満月が、アオイの小さな嗚咽が聞こえなくなるまで、そっと俺達を照らし続けていた。