第1章 戦いの後
、、、懐かしい匂いだ、、、。
目を開けると、いつの間にか日暮れ時になっていた。
「俺、寝てたのか」
最後に覚えているのは、アオイの温かく柔らかい感触と、いつもと違った穏やかな声。
包まれているだけで昂った気持ちが妙に安心して、まぶたが重くなっていったのを覚えている。
ぐぅ、、、。
窓から流れ込む夕陽の匂いとともに鼻をくすぐる香りに腹の虫が疼いた。
「腹減った、、、」
さっき起きたときよりも身体は重く感じたが、何とか起き上がることができた。
徐々に暗くなっていく部屋。
沈んでいく夕陽と一緒に再び沈みこみそうになった時、
「なんだ、起きていましたか」
凛とした声にハッとした。
見ると、扉の前にアオイが立っていた。
「アオイ、、、?」
「夕飯ができましたが、お待ちしてもいいですか?」
「あ、、、」
「食べられますか?というか食べないと薬も飲めませんし、いつまで経っても治りませんけど」
驚きのあまり言葉が出てこない。
だって、なぜだか知らないが彼女がいつもの隊服じゃなく花柄の着物を着ていたから。
「あの、聞いてます?食事は食べれそうですか?」
「、、、なんだその格好」
「え?格好?」
「何で隊服じゃねぇ?」
「何でって、、、誰かさんの涙やら鼻水で肩が汚れてしまいましたから。汚れた服で市場に行くわけにもいきませんでしょう?」
アオイは面倒そうに答えた。
けれど俺はその答えを簡単に受け入れることはできなかった。
「なっ、お前、それで市場に行ったのか!?」
身体の痛みも忘れて身を乗り出す。
「行きましたよ?そうでないとあなたの食べるものを買い足せないでしょう」
「そんな格好でか!?」
「そんな格好って、そんなにおかしいですか!?」
「そんな女みたいな格好して馬鹿か!?」
「馬鹿とは何ですか!?というか私はちゃんと女ですが!?」
俺が声を荒げるに従って、アオイも声を荒げる。