第3章 求愛エモーショナルチェンジ!【ケイト甘夢】
ケイトは何を考えているのだろう。
いつも笑顔のケイトが好きなのに、最近彼は感情が読めない顔をする。
「高校生」から「大人の男」への変化が垣間見えるようで、どうすればいいかわからなくなってしまうのだ。
「えっ、と…ちゃんと、歯磨き……するんだ、よ」
何を言っていいかわからなくて、トンチンカンなことを口にしてしまう。
あれ、と思った時には既に遅く、私はケイトの腕の中にいた。
「ちょっ、何してんの!?ここがっこ、」
「あのさぁちゃんセンセー」
オレのこと、いつまで子供扱いしてんの?
普段よりずっと低い声が耳を掠める。
「だって、ケイトは」
生徒でしょう。それを最後まで言うのは許してくれなかった。
甘くて柔らかい温度が私の言葉を塞ぐ。
「!?」
でも、それは一瞬で離れる。
「本気だから」
いい加減分かってよ。
その表情にドキッとしてしまったのは仕方ないと思う。
頷くので精一杯だった私は、ケイトが寮に入ったと同時にズルズルと座り込んだ。
後から来た1年生たちに「どうしたの先生!?顔赤いよ!?」とか言われたけれど、大丈夫としか言うことができなかった。
数日後
「カリム!お前は本当大雑把だな!お前のそういうところが嫌いなんだよ!!」
「俺はジャミルのこと好きだぜ!
今日は宴なんだから早く帰ろうぜ!行くぞ!」
「おい、待てって!カリム!!」
ジャミルは廊下を走るカリムを追いかける。
カリムはすっかり普段の雰囲気に戻っていて、太陽みたいな笑顔を浮かべている。
二人の関係は今までと変わったようだけれど、それでもいい方向には向かっているようだ。
鬼ごっこのように走る2人に、
「廊下走ったら危ないよ!」
と私は注意する。
確実に違うのに楽しそうな2人にほっとして、思わず頬が緩んでしまう。
カリムの「はいはぁい!」と明るい返事がまた廊下に響いた。
END