第1章 灼熱サンシャイン!【カリム・アルアジーム/切甘】
「何であんたは掃除の一つもできないんだいっ!?」
富豪の家のメイド長は数日前に買われたばかりの奴隷・に鉢植えを投げつける。
ガシャン!
鉢植えはの前で大きな音を立てて割れる。
『申し訳ありません、メイド長』
「私は何度も同じことを言うのは嫌いでね!あんたを売りつけるためにもう表に奴隷商人も呼んであるんだ!!
使えない奴隷は売り払って金にするに限るね!」
メイド長はの髪を引っ張り、廊下から玄関まで歩き外へ出た。
『…っ!すみません、すみませんっ!それだけはどうかご勘弁くださいっ!!私ここを離れたら…もう生きていけないんです!』
「知ったこっちゃないわ!」
外を見たは奴隷商人を見てガタガタと震える。
「お待ちしておりました、メイド長殿」
この真っ黒なローブに身を包んだ白髪の老人は、気持ち悪いくらいの作り笑顔をする奴隷商人。
その手には奴隷に言うことを聞かせるための調教用の鞭を手にしている。
またあの暗い牢屋に閉じ込められて鞭で打たれる日々に戻る…
誰かに買われたとしても、次買われたところが良いところとは限らない…
怖い、怖い…誰かっ!
は意を決してメイド長を振り払い、奴隷商人のいる方角と真逆の方角へと逃走する。
「あ、逃げたっ!」
「早く追って頂戴!!」
人と人の合間を縫って、全力で走る。
奴隷商人は「奴隷が逃げた!誰か捕まえてくれー!!」と叫びながらを後ろから追いかける。
100mほど走ったところでは自分の足に付いている鉄の足枷に足を引っ掛けて転ぶ。
『っ!あぁあ!!』
「しめた!手間をかけさせやがって!!」
奴隷商人は、起き上がろうとするの背中を足蹴にして鞭を打つ。
バシィ…バシィ…!
乾いた革の鞭が皮膚を力強く打つ痛々しい音が響く。
往来する人々はその光景を見ても皆見て見ぬ振りをする。
それがこの国の現実。
グゥゥゥゥ…
の腹が鳴る。
彼女はあの家に買われてからまともに食事も水も取らせてもらえていなかった。
人魚と人間の混血のは普通の人間よりも喉が乾くのは早い。
『…すみ、ませ…水…水を、くださ…』
「お前自分の立場を分かっているのか!?ええい忌々しい!」