第33章 蝶の舞
うっ、ううっ、と嗚咽を漏らしながら泣く童磨だが、杏たちの同情心が向くことはない。
気色悪い。─杏がそう言おうとした瞬間、カナヲが先に口を開いた。
カ「もういいから。嘘ばっかりつかなくていいから。」
真っ直ぐに童磨を見ながら言うカナヲの言葉に童磨は涙を流したまま固まる。
童「何??」
カ「貴方の口から出る言葉は全部でまかせだってわかってる。悲しくないんでしょ??少しも。貴方の顔色全然変わっていない。"1番の友人”が死んだのに。顔から血の気が引いてないし、逆に怒りで頬が紅潮するわけでもない。」
童「それは俺が鬼だからだよ。」
カナヲの言葉を静かに聞いていた童磨は穏やかに返す。
カ「鬼は常に瞳が潤い続けるから瞬きしないけど、人間と同じく血は巡っているから顔色は変化する。」
そこまで言ったカナヲは何かを思い出すかのような表情をしたあと、再び口を開いた。
カ「貴方のことを気の毒だと死の間際にカナエ姉さんが言ってた。貴方、何も感じないんでしょ??」
その言葉に童磨は笑顔のまま完全に固まる。
そんな童磨の様子を知ってか知らずかカナヲは言葉を続ける。