第5章 花屋敷
『……。』
お「起きてからこれまでの記憶がないという不安は君が1番よく分かるだろうと思ってね。」
『そう、ですね…。』
お「私だけでなく、他にも無一郎の心を理解できる者が必要なんだ。お願いできるかい??杏。」
『御意。お任せください。』
いつもお館様の命であれば断ることはない。
少し嫌だなと思った任務でも必ず遂行してきた杏。
この目の前で眠る自分よりも年下の少年のことだけは自ら助けてあげたい、そう思った。
無「…だれ??」
目を覚ました時透が朧げな瞳で杏を見る。
そんな時透に杏はふわりと優しく微笑む。
『音白 杏と申します。私も、10歳のときに目覚めてからそれ以前の記憶がありません。』
時「…え??」
『…よければ、少しお話しませんか??』
目を見開く時透に少し眉を下げながら微笑む。
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あの時、お館様に言われた通り2人で少し話をした。
杏は任務がある日以外の毎日通い、2人は互いに互いを信頼し合う仲になっていた。
──ガラッ
『お待たせしました。』
杏が襖を開けると、不死川と時透が何か話していた。