第33章 蝶の舞
『私が今、この場所に桜柱として立っていられるのは私がこれまで出会ってきたすべての人たちのおかげ。その中でも貴方がこの前会った不死川さんは勿論、しのぶさんとカナヲちゃんは側で互いに支え合ってきた大切なひとたち。』
童磨を睨みつけながら話す杏を童磨は不思議そうに見ている。
本当に意味がわからないというような顔をして。
しかし、次の一言で童磨の顔が分かりやすく曇った。
『むしろ、そのような考え方しかできないあなたの方がよっぽど可哀想。』
童「…可哀想??」
『えぇ。本当に憐れ。』
童磨の顔が曇ったことを見逃さなかった杏はさらに続ける。
『貴方が人の心を理解できないのは鬼だからじゃないんでしょうね。きっと人間であった頃から人の心を理解できなかったのでしょう??こんなに素敵で温かな気持ちを理解できないだなんて本当に、可哀想。』
童「………やだなぁ。たしかに俺は人の心なんてわからないけど、全然可哀想なんかじゃないよ。」
童磨は一瞬だけ黙ったが、すぐにヘラヘラとした笑顔を浮かべる。
『…そう。まぁ別にどうでもいいですけど。』
ヘラヘラする童磨にイラつきながら吐き捨てる杏。