第32章 最愛
炭(あ…、足が止まった……。)
足を止めた猗窩座の先に大切な父親の姿があった。
真っ暗な景色のなか、向かい合う2人。
猗(親父……。もう平気か??苦しくねぇか。)
── 父「大丈夫だ、狛治。ありがとうなァ……。」
父の言葉を聞いた途端、猗窩座の姿が狛治の姿へと変わる。
猗(ごめん親父。ごめん。俺やり直せなかった。駄目だった…。)
その場に跪く狛治。
── 慶「関係ねぇよ。」
そんな狛治の頭に優しく手を置く慶蔵。
── 慶「お前がどんな風になろうが息子は息子。弟子は弟子。死んでも見捨てない。…天国には連れてってやれねぇが。」
狛(師範…。)
眉を下げながら笑う慶蔵の言葉に狛治の瞳には涙が滲む。
そのとき、優しく撫でてくれていたはずの手が突然、グシャッ、と狛治の髪を鷲掴んだ。
鬼「強くなりたいのではなかったのか??お前はこれで終わりなのか??」
その手は鬼の始祖である鬼舞辻無惨。
奴の血による支配は強力であり、父や師範により狛治の姿へと変わっていた身体が猗窩座の姿へと戻っていく。
鬼「猗窩座。」
猗(そうだ。俺は強くなる。強くなりたい。)