第32章 最愛
放たれた滅式の威力による風圧で少し離れたところに転がる炭治郎と冨岡。
急いで顔を上げた炭治郎が見つけたのは煉獄の命を奪った滅式を自身に打ち込み、身体がボロボロになった猗窩座。
炭(自分で自分を…。)
どうして猗窩座がそんなことをしたのか炭治郎はわからない。
炭(どうして自分を攻撃したんだ??どうして……。一瞬、猗窩座から感謝の匂いがした。どうして笑った??)
炭治郎と冨岡が状況を理解できずにいるなか、猗窩座はぺたぺたぺたと歩き回っていた。
──ビキビキ メキメキ
自分自身の身体を攻撃した猗窩座だったが、既に頸の弱点を克服したその身体は再生を始めていた。
猗(もういい。やめろ。再生するな。)
しかし、身体の再生は止まらない。
猗(勝負はついた。俺は負けた。ある瞬間完敗した。正々堂々、見事な技だった。敵の動きを完璧に読み、ギリギリで回転。敵が攻撃を出し切る前に斬り込む。終わりだ。潔く、地獄へ行きたい。)
ぺたぺたと歩き回る猗窩座をじっ、と見つめる炭治郎。
炭(どこに、行きたいんだろう??)
すると、ある場所で猗窩座はピタリと止まった。