第32章 最愛
自身の激しい胸の鼓動を感じ、スゥゥゥハァァァァァと大きく深呼吸をする。
鱗("最終局面”という言葉が何度も頭を過る。その度に体の芯が震え、心拍が上がる。)
ゴクリ、と生唾を飲み込む。
鱗(この長い戦いが今夜終わるかもしれない。まさかそこに自分が生きて立ちあおうとは…)
そう考える鱗滝の脳裏には初めて会ったときの炭治郎の姿が蘇っていた。
鱗(炭治郎。思えばお前が鬼になった妹を連れて来た時から何か大きな歯車が回り始めたような気がする。
今までの戦いで築造されたものが巨大な装置だとしたならばお前と禰󠄀豆子という2つの小さな歯車が嵌まったことにより、停滞していた状況が一気に動き出した。)
苦しむ禰󠄀豆子を見ながら鱗滝にも汗が滲む。
鱗(負けるな、禰󠄀豆子。
負けるな、炭治郎。
絶対に負けるな。)
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