第31章 それぞれの闘い
祈「…杏さまは貴方たちを守れ、と仰っているのね。」
祈里のその小さな呟きに音羽はハッ、とした。
音「あ…、そっか…。この方たちの気配は確かにわかりにくいけど、わかる人には鬼だと分かる。けれど、甲である私たちがこの方たちを斬るな、と言えば隊士たちは従う他ない。力づくで斬ろうにも私たちが守ればそんなことにはならない。」
祈「…それだけ、この方の力が必要ということ…なのかな。」
杏の意図が読み取れたが、祈里も音羽も俯いてしまう。
珠(複雑そう…。それもそうか。きっと、この人たちは柱である彼女を尊敬している。いつもなら言われたことは必ず遂行しているのだろうけど、今回は……。)
祈里と音羽の震える手を見つめる。
珠(鬼殺隊士は鬼に家族や友人、近しい人を殺されている者が大半。彼女たちだって、鬼は憎いはず。それなのに、鬼を守る…嫌でしょうね。)
珠世は心の中で同情の視線を向ける。
珠世の同情の視線の中、祈里と音羽は鬼により亡くした大切な人の姿を思い浮かべる。