第31章 それぞれの闘い
音「か、階級を示せ。」
音羽も自分の右手を掲げると、手の甲には藤花彫りの"甲”の文字が浮かんだ。
音「…なんで…私たちはまだ乙に上がったばかりだったのに…。」
自分たちの手の甲を見て固まってしまった2人に珠世は話しかける。
珠「『階級はお館様のご意思である』。あの方はこの言葉だけで、お2人であれば階級が甲である理由はわかるだろうと仰っていました。」
祈「階級は…お館様のご意思…。」
珠世の言葉を復唱したとき、以前杏が話していた言葉を思い出した。
── 『お館様のご意思が私の意思ですから。』
祈「お館様のご意思は杏さまのご意思…。」
音「あ…。」
祈里に呟きに音羽も思い出した。
音(階級が甲ということは、柱の方を除けば最も高い階級。しかも、現在は甲の隊士がすごく少ない。)
祈(杏さまは…私たちに隊士たちに指示を出せ、と仰るの…??)
2人は杏の意図がわからず、眉を顰める。
しかし、ふと珠世と愈史郎を見てあることを思いついた。
祈「…杏さまが、私たちを探せと仰ったのですね??」
珠「はい。」
祈里の小さな問いかけに珠世は頷く。