第31章 それぞれの闘い
その言葉に2人は杏からもらった桜の髪飾りに触れる。
祈「杏さまはどうして私たちを…。」
祈里と音羽は杏の考えがわからず、困惑する。
珠「私はその方から鬼殺隊士たちの救護を頼まれました。私は鬼となってから医者として生計を立てておりましたので、治療には自信があります。」
珠世は向けられている祈里のきっ先が揺らいでいるのを見ながら話を続ける。
珠「その方は恐らく、お2人が私たちをすんなり信じることはないだろうと言っていました。その場合はこう言うようにと…貴方たち2人は"甲”である、と。」
祈「…私たちはまだ乙のはずです。」
珠世の言葉に祈里は小さな声で返す。
愈史郎も自分を押さえつける音羽の力が緩んできているのを感じ、口を開く。
愈「だったら確認してみればいいだろう。確認してみて甲であればその刀を仕舞え。」
その言葉に祈里と音羽は目を合わせる。
音羽がゆっくりと頷いたのを確認し、祈里はゆっくりとした動作で右手を掲げる。
祈「…階級を、示せ。」
──ズズッ
祈里の手の甲には藤花彫りの“甲”の文字が浮かんだ。
祈「…甲。」
祈里も音羽も目を見開く。