第29章 妹の想い
カ「師範、……しのぶ姉さん。帰りましょう。アオイが、きよが、すみが、なほが待ってくれてる、あの家に…。カナエ姉さんと暮らしたあの家に…。
私は、一緒にっ、帰りたいっ…!!」
カナヲは涙を溢れさせながら叫ぶ。
し「………。」
沢山の涙が溢れているが、その瞳はまっすぐとしのぶの姿を映していた。
し(あぁ……本当に、カナヲは成長したなぁ。蝶屋敷に来たばかりの頃のことがまるで嘘のよう。あんなにお腹を鳴らしていても私たちが「食べなさい」というまで決してご飯を食べなかったのに…。)
しのぶはカナヲが蝶屋敷に来たばかりのことを思い返す。
し(こんなに感情溢れる姿なんて、見たことなかったのに…。カナヲが目に見えて変わりはじめたのはいつからだろう??姉さんが死んでから??鬼殺隊に入隊してから??それとも……)
カナヲが変わりはじめたきっかけを考えるしのぶは途中でカナヲを引き取ったばかりの頃に言っていた姉カナエの言葉を思い出した。
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カ「きっかけさえあれば人の心は花開くから大丈夫。いつか好きな男の子でもできればカナヲだって変わるわよ。」
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その言葉と同時に浮かぶ市松模様の羽織を纏い、額に痣がある、鬼を連れた隊士の姿。