第29章 妹の想い
そう呟き、カナヲは顔を上げる。
目の前にいるしのぶは未だに童磨を見ていて、カナヲの変化に気づいていない。
カ「師範。」
先ほどまでと違い、どこか芯のあるカナヲの強い声にしのぶはカナヲの方に振り返る。
──パンッ
その瞬間、部屋に乾いた音が響いた。
未だ口撃を続けていた杏と童磨も思わず音がした方に視線を送る。
そこには右手を振り切っているカナヲと左頬を打たれ、目を見開いたまま固まっているしのぶがいた。
童「あらら…。」
『カナヲちゃん…。』
杏も童磨も驚いた表情をみせるが、杏はすぐにカナヲを強く見つめる。
しばらくの間のあと、しのぶは打たれた左頬に手を添え、驚きの視線をカナヲに向ける。
し「カナヲ…??」
カ「師範…私は、私たちは、貴方が大好きなんです!!貴方が私たちを大切に思ってくれているのと同じように、私たちは貴方が大切なんです!!」
悲痛な声で叫ぶカナヲ。
し「カナヲ…。」
カ「死ななきゃならないなんて…そんな悲しいこと言わないで…。」
カナヲの瞳に涙がじわりと滲む。