第29章 妹の想い
しのぶの手当てをしたくとも上手くいかない状況にどうしよう、という言葉がカナヲの頭の中を巡る。
手にギュッ、と力を入れたとき、右手に握っていた薬を思い出した。
そっ、と手を開いてその薬を見つめる。
カ(桜柱様はこの薬を作ったのはアオイだって、仰ってた…。アオイ…、柱稽古で怪我をした隊士たちを治療したり、家事したり、師範が忙しいから屋敷を1人で回してた…。)
カナヲの脳裏にテキパキと働くアオイの姿が映る。
カ(自分だって忙しいのに…私たちのために薬まで…。)
右手に握った薬を胸元でもう一度ギュッ、と握りしめる。
カ(アオイ…。きよ…。すみ…。なほ…。)
カナヲは大好きな家族が笑い合っている姿を思い起こす。
アオイ、きよ、すみ、なほ、カナヲ。
そしてその中心にはしのぶがいる。
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『カナヲちゃん。しのぶさんのことお願いしますね。』
『言ったでしょう??私にはできないの。貴方にしかできないの。』
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カ(私にしか………。)