第29章 妹の想い
カ「はいっ!!」
前を飛ぶサクラを追い抜き、周りとは明らかに違う鉄の襖に手をかける。
そのとき、カナヲも追いつき、反対側の鉄の襖に手をかけた。
──バン
特に合図はしていないが、同時に勢いよく襖を引く。
その瞬間に広がった中の風景にカナヲはもちろん、杏もサーと血の気が引いた。
強い血の匂いが充満した部屋には、たくさんの女性の死体。
そして、上を見上げれば、童磨に捕まっているしのぶの姿があった。
カ「師範!!」
カナヲがそう叫んだとき、しのぶにその声が届いたのだろう。
しのぶは自由に動かせる左手を動かし、指文字を作る。
その動きを童磨が見逃すわけがなく、腕に力を入れようと腕を動かす。
しかし、杏もその動きを見逃さなかった。
ー 桜の呼吸 肆ノ型 花明かり ー
杏が飛び上がり技を放った瞬間、辺りがパッ、と光る。
童「!?」
その光を間近で見た童磨は勿論、カナヲも思わず目を閉じる。
カナヲと童磨が目を開けたとき、しのぶも杏も童磨の目の前にはいなかった。
─トッ
杏は軽い音を立てて着地する。
その腕の中にはしのぶがいた。