第29章 妹の想い
『私は…しのぶさんの、最愛の姉の仇をとりたい気持ちが痛いほどによくわかります。だから、私にしのぶさんを止めることはできませんでした。』
カナヲはダラダラと汗を流しながらも杏をしっかりと見つめている。
『でもね、私はあなたの気持ちも同じようによくわかるの。最愛の姉に先に逝かれる苦しさを知ってる。』
杏の言葉にカナヲの瞳には涙が溜まっていく。
『だから、私はあなたの気持ちが知りたいの。想いが知りたいの。それを聞いた上で、しのぶさんの想いとあなたの想いのどちらを優先するか決めたい。』
杏の言葉にカナヲはグッ、と拳を握る。
カ「私は…!!────────…!!」
カナヲは瞳にいっぱいに溜めた涙を零すことなく、まっすぐ何かを叫んだ。
『…わかったわ。行きましょう。大丈夫。今私の鴉がしのぶさんを探してくれてる。きっとすぐに見つかるわ。』
杏はカナヲの叫んだ言葉を聴き、優しく微笑む。
カ「はいっ…。」
笑顔を見せてくれるカナヲに杏は頷いてみせる。