第28章 対峙
し(力が弱くても。鬼の頸が斬れなくても。)
毒の影響が童磨の頸辺りに広がる。
し(鬼を1体倒せば何十人、倒すのが上弦だったら何百人もの人を助けられる。)
童磨の頸から日輪刀が抜け、身体の支えがなくなる。
し(できるできないじゃない。)
重力に逆らえず下に落ちていく身体。
し(やらなきゃならないことがある。)
そのとき、しのぶの脳裏にあの夜に屋根の上で話した炭治郎の顔が浮かぶ。
── 炭「怒ってますか??」
し(そう。私、怒ってるんですよ、炭治郎君。
ずっと、ずーーっと怒ってますよ。)
あのときに答えられなかった言葉が溢れる。
し(親を殺された。)
優しかったお父さんとお母さん。
し(姉を殺された。)
誰よりも優しくて、大好きだった姉。
し(カナヲ以外の継子も殺された。)
家族の証である蝶の髪飾りを身につけていた継子たち。
し(あの子たちだって本当なら今も。
鬼に身内を殺されてなければ今も。
家族と幸せに暮らしてた。)
蝶屋敷で暮らす可愛い可愛い妹たち。
鬼によって幸せを奪われた沢山の大切な人たちを思い浮かべる。
そして、未だ天井に張り付いている童磨を睨みつけた。