第28章 対峙
その言葉で、しのぶは姉の厳しい声が姉としてではなく、花柱 胡蝶カナエとしての言葉であることに気がついた。
じんわりと溢れていた涙が完全に止まる。
── カ「倒すと決めたなら倒しなさい。勝つと決めたのなら勝ちなさい。どんな犠牲を払っても勝つ。私ともカナヲとも約束したんでしょう。」
し(カナヲ…。)
脳裏に、近頃心も身体もすごく成長した大切な妹の姿が横切る。
しのぶはカナエの言葉を頭の中で繰り返し、自分の中に落とし込んでいく。
しかし、鬼は待ってくれない。
童磨は蹲ったままのしのぶに背後から歩み寄ってきていた。
童「ごめんごめん。半端に斬ったから苦しいよね。」
しかし、しのぶにはそんな童磨の言葉など聞こえていなかった。
聞こえているのは大好きで、尊敬する、最愛の姉、カナエの声だけ。
── カ「しのぶならちゃんとやれる。頑張って。」
そう言ったカナエの瞳には涙が光っていた。
その言葉にしのぶはスッ、と立ち上がる。
童「え、立つの??立っちゃうの??
え――…。君ホントに人間なの??」
しのぶは額にびっしりと汗をかきながらも童磨を睨みつける。