第5章 花屋敷
そのため、お菓子だけはその辺のお店にも負けないものを作ることができる。
今日屋敷にやってくる不死川だけでなく、甘味が好きな柱は材料を持ってよくやってくる。
甘露寺が来た日は1日中2人でずっと桜餅を作っていた。
『不死川さんはお土産の分も含めて15個も作っておけば足りるわよね。』
不死川の好物がおはぎであることを知ったのも本当に偶然だった。
2年ほど前、杏が屋敷でいつも通りお菓子を作っているところに不死川がやってきた。
客間に通し、作っていたおはぎや桜餅、お団子などを試食してみてくださいと言って出してみるとおはぎを食べるときだけ明らかに表情が違ったのだ。
試しに聞いてみると案の定隠そうとしていたが正直バレバレだった。
それ以来、杏は不死川が屋敷に来るときや自分が不死川邸に行くときには必ずおはぎを作るようにしていた。
『ふぅ、こんなものかしら。』
15個のおはぎを作り上げ、皿に盛ってゆく。
お皿には2つずつのせ、お重に残りを敷き詰めていく。
すると、
──バサッ
「カァァ!!カァァ!!」
庭から羽の音と鴉の鳴き声が聞こえる。