第2章 甘味処〈さくら〉
客に注文を聞いた杏は元気に厨房へと駆けていく。
つ「こら、杏!!店の中で走っちゃだめでしょう!!」
思わず駆け出してしまった杏を軽く叱っているのは、次女 音白 つばき。18歳。大正では珍しく肩で切り揃えられた髪に椿の花がモチーフの髪留めをつけている少女。黒い瞳で、漆黒のように黒く美しい髪は毛先がほんのり赤色に染まっている。主に、店の経理を担当しているしっかり者。縁談は大量に来ているが、姉さんが結婚してないからという理由で片っ端から断っている。
『ごめんなさい、つばき姉さん。』
しゅんとして謝る杏。そんな杏を見てはぁと、軽くため息をつくつばき。
つ「もういいから、次からは気をつけるんだよ??
さぁ、はやく姉さんの所へ行きなさい。」
『はーい!!』
お許しを頂いた杏は今度は走ることなく、厨房へと向かう。
『ゆり姉さん!!お抹茶とみたらし団子!!
はいりました!!』
ゆ「わかったわ、杏ちゃん。ご苦労さま。」