第27章 無限城戦 開戦
杏は再び正面に視線を戻す。
杏(タイミングを逃すな…。遅ければお館様もあまね様も、私の命もない。早くに行きすぎればこのお館様の決死の策すらも台無しにしてしまう。
…絶対に、お館様を守るのよ。)
集中し、周りの空気の僅かな振動すらも感じとる。
その刹那──
杏の耳が小さな小さな音を捉えた。
杏(いまっ…!!)
杏が走りだしたその瞬間、ドンッ、と大きな大きな爆発が起こった。
ー 桜の呼吸 漆ノ型 彼岸桜 ー
遠心力を利用した型でお館様とあまね様の周囲の爆風とまきびしを斬り、お2人の身体を守る。
『っ、』
しかし、斬り飛ばさなかった僅かなまきびしが頬を掠める。
杏(もうっ、いい、離れなきゃ…。)
大きな爆発は収まり、辺りは炎に包まれている。
杏は刀をしまうと、お館様とあまね様を抱える。
『行きますっ、』
僅かな炎の隙間を縫って走る。
杏(…っ、熱い…。お館様、あまね様、どうか耐えて下さいませ…。)
そう願いながら走り続ける。
宇「音白!!」
宇髄の声がする方へと必死に走る。
──ドサッ
宇「よくやった!!」