第26章 人の想い
そこに正座していた少女に鬼舞辻無惨の視線が奪われる。
毛先がほんのりとさくら色に染まったゆるくウェーブのかかった美しい黒髪でハーフアップをサイドに寄せ、お団子をつくり、杏の花がモチーフの簪でまとめられている鬼殺隊の隊服を着た1人の少女。
鬼舞辻無惨が目を見開き、その少女──音白杏を見つめていると、お館様が口を開く。
お「君がご執心の子だよ。音白杏。君の言葉で言うなら“青い彼岸花”…かな??」
鬼「そうか…!!お前が…あのときの娘か…!!」
お館様の言葉を聞き、鬼舞辻無惨はとてつもない喜びから笑みが溢れる。
杏はその鋭い殺気を隠すことなく、しかし、人々が見惚れるほどの満面の笑みを浮かべる。
『えぇ。私が貴方が探していたという者です。
して…、私に何用ですか??』
表情は笑っているが、その目は笑っていない。
鬼「お前の身体の中にはあの日の"青い彼岸花”が眠っているのだ!!私が千年かけても見つけることが叶わなかったあの花を…!!」
しかし、鬼舞辻無惨はそんなことに気づかないのか、興奮したような様子で声を弾ませる。
『………なんのことです??』
杏は確かに"青い彼岸花”はあの日、この目で見た。
そのことに間違いはないが、自身の身体に眠っている、と言う言葉が理解できない杏は怪訝そうな顔を浮かべる。