第25章 伝える想い
『あ、まっ、待って…!!』
慌てた杏は思わず不死川の羽織の袖を掴んで引き止める。
不「どうしたァ??」
不死川はしっかりと杏の方に身体ごと向けてくれる。
『え、えっと…、その…、わ、わたし…、』
羽織の袖を掴む手に力が入っていくばかりで言葉が出ない。
杏(言葉が出ない…。何て言えば良いの…??
どうしようっ…。)
どうしたらいいかわからなくなり、俯いてぎゅっと目を瞑る。
そのとき、
── も「大丈夫だよ、杏。」
── つ「よく見て。待っててくれてる。」
── ゆ「ゆっくりでいいのよ。」
突然、頭の中に響いた優しくて大好きな声。
杏(紅葉姉さん…。椿姉さん…。百合姉さん…。)
聞こえた大好きな姉たちの声。
その声に杏は瞳を開けてゆっくりと顔を上げる。
そこにいたのはじっ、とこちらを見て、杏の次の言葉を待っていてくれている不死川だった。
── ゆ「ほら、大丈夫。」
── つ「自分の気持ちを素直に言えば良いの。」
── も「頑張れ、杏。」
杏(ありがとう、姉さん。)