第25章 伝える想い
祈里がなんとか絞り出すように問いかける。
音羽も神妙な面持ちで杏を見つめる。
『この棚の開け方、私しか知らないんです。
あの部屋を開けるときにこの棚が開けられないからといって手荒にされるのは嫌ですからね。』
しかし、杏は2人の様子が見えていないかのようにニコッ、と微笑む。
当然のことだと言わんばかりの"いつも通り”の杏だ。
祈「杏さ、」
『さ、お2人とも。始めますよ。』
祈里が声をかけようとするが、杏はそれを遮って棚の方へと足を向ける。
『しっかり見ていてくださいね。』
黙り込む祈里と音羽に振り向きながら笑顔を向ける。
祈「……わかり、ました。」
音「頑張って覚えますね…。」
その杏の笑顔を見て、祈里と音羽も無理やり笑顔を作り、棚へと足を向けた。
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