第24章 譲れない想い
『……あんず??』
聞き覚えのない単語に首を傾げる。
すると、おやかたさまは何かを考え込んだ後に口を開いた。
お「………君の名前を聞いてもいいかい??」
なまえ??
………名前。
おやかたさまに聞かれてやっと胸に痞えていたもやもやの正体がわかった。
『わか、りません…。』
お「…そうか。じゃあ、家族のことはわかるかい??」
『わかん、ない…です…。』
なんにもわかんない…。
お母さんは…??お父さんは…??
いるの…??どこに…??
ぐるぐると頭の中を同じ問いかけが回る。
あんずって誰…??
本当に私…??
私は………誰、なの??
お「杏。」
頭の中がぐるぐるして何も分からなくなったとき、おやかたさまの手が私の頭の上にのった。
『おやかたさま…??』
いつのまにか下がっていた顔をゆっくりと上げておやかたさまを見つめる。
お「杏。君の名前は杏。音白杏だ。」
『おとしろ、あんず…。』
お「そうだよ。記憶を無くしてしまっているみたいだけれど、君は音白杏だ。」
『私は、おとしろ…あんず。』