第24章 譲れない想い
悲鳴嶼の方へと勢いよく向きなおり、涙を浮かべながら叫ぶ杏。
悲「音白…。」
こんなに感情を剥き出しにした杏を見たことがない悲鳴嶼は困惑した表情で杏を見つめると同時に拳をグッ、と握る。
悲鳴嶼とてお館様たちに死んでほしいなど思っていない。
むしろ今の悲鳴嶼にとっては他の誰よりも生きていてほしい人たちだ。
お「杏…、ありがとう…。
杏は…優しい…子だね…。」
『お館様…。』
向かい合う杏と悲鳴嶼にお館様は優しく声をかける。
その声に杏もお館様へと視線を戻した。
お「でも…どうか…聞いておくれ…。
これが…私の、最期の…願い…なんだ…。」
悲「っ、」
微笑みながらそう話すお館様。
"最期”。
その言葉に激しく動揺する悲鳴嶼。
杏はお館様の手をそっと握り、今度は小さく語りかける。
『そんなことっ…言わないでください、お館様。
生きるんです。鬼舞辻無惨を滅すればきっと産屋敷一族に伝わる呪いもなくなると私は信じています。どうか…寿命の限り、その命を大事にしてください…。』
お「杏…。しかし…、」
杏の言葉にお館様はなおも首を縦に振ってくださらない。