第24章 譲れない想い
お「ありがとう…行冥…。
さぁ、こちらに…来ておくれ。」
悲「御意。」
お館様の言葉に悲鳴嶼はすぐに頭を上げて立ち上がる。
『……御意。』
悲鳴嶼からワンテンポ遅れて、杏は手を震わせながらも頭を上げ、お館様をその瞳に映す。
『…っ!!』
分かっていた。
産屋敷一族に代々伝わる呪いについては十分に理解していた。
しかし、それでも、目の前の布団の上に横たわる産屋敷耀哉の姿を見て動揺せずにはいられなかった。
杏(最後に、お姿を拝見したのはいつ…??記憶が戻ってすぐのあれが最後…??あれから、そんなに時間は経っていないのに…どうして…。)
どうして…なんで…、と思考が止まらず、体が動かない。
悲「…音白。」
『っ…、……はい。』
悲鳴嶼に声をかけられ、慌てて立ち上がる。
悲鳴嶼も杏の様子にお館様の病態について察しがついてか、険しい顔を浮かべていた。
杏と悲鳴嶼はそのままお館様の元へと近づき、正座する。
お「こんな姿で…ごめんね…。」
悲「いえ…。今日はどのようなご用件でしょうか。」
起き上がることもできない様子のお館様の様子に杏は未だ動揺しており、口が聞けない状態だった。