第24章 譲れない想い
悲鳴嶼の方でも同じようなやりとりをしているのを横目に見ていると、鴉が声をかけた。
『はい。』
みんなで鴉の後をついていく。
屋敷の中に入ったところからは案内役がひなき様とにちか様に入れ替わる。
ギシッ、と床が軋む音だけが辺りに響く。
ひ・に「「こちらでございます。」」
ある一室の前で立ち止まり、その場に座るひなき様とにちか様。
杏と悲鳴嶼も膝をつき、頭を下げる。
ひ.に「「お館様、杏様と悲鳴嶼様がお見えになりました。」」
お「入って…おいで。」
いつも通り優しい声音だが、掠れた小さな声。
そんなお館様の声に杏はこぶしをグッ、と握りしめる。
お2人はお館様の声を聞き、それぞれ左右に襖を開く。
お「杏。行冥。久しぶり…だね…。
今日は…来て…くれて…ありがとう…。」
頭を下げているため姿は見えないが、その声と言葉のたどたどしさでなんとなくの想像はつく。
杏はびっしりと汗をかき、手が震えていた。
そんな杏の様子を見えずとも察してか、悲鳴嶼が口を開く。
悲「お館様におかれましても、御壮健で何よりです。益々の御多幸を切にお祈り申し上げます。」