第4章 柱合裁判
『えぇ。かなり思いきり蹴ってしまったし、おはぎはたくさん用意しなくちゃ。』
廊下を歩きながら話していたため、杏の自室の前に着く。
『サクラ、先に行っていて。
もう寝てていいわよ。』
サ「ハーイ」
バサバサッと杏の腕から飛び立ち、部屋の中にある籠の中に降り立ち寝始めた。
そんなサクラを見て微笑む杏。
そして、後ろに振り返り自室の正面にある鍵がかけてある部屋の扉の前にたつ。
──カタンッ
扉に額と右手をつく。
『おやすみなさい。』
これも毎日の日課の1つだ。
何故かはわからないがこの部屋には“おはよう”や“おやすみ”などの挨拶をしなくてはならない気がするのだ。
部屋にあるものは目が覚めたばかりの頃にお館様から頂いたものだ。
頂いたその瞬間から何故かとても大切なものに思えたモノたち。
誰かに入られるのが嫌だったため、お館様に頼んでお屋敷を作る際に杏にしか開けることのできない鍵を作って頂いた。
扉から離れ自室に入る。
着ていた羽織を脱ぎ、衣桁にかけ、台の上に置いていた櫛を手に取り丁寧に髪を梳かす。
長い黒髪がサラリと揺れる。