第24章 譲れない想い
ひ「本日はありがとうございます。」
に「当主が本邸にてお待ちです。」
ひ・に「「参りましょう。」」
『本邸で…??』
悲「承知いたしました。」
ひなき様とにちか様の言葉に杏は困惑するが、悲鳴嶼は顔色を変えることなく返事をする。
悲鳴嶼の返答を聞いたお2人は踵を返し、歩いて行く。
その後を杏と悲鳴嶼もついていく。
杏(なぜ本邸で…??)
現在、杏たちがいる場所は産屋敷邸ではあるが、この屋敷は隊士たちが産屋敷家の方々に謁見する場であり、産屋敷家の方々が生活をする本邸ではない。
産屋敷家は鬼舞辻無惨から襲撃されぬよう柱でさえもその場所を知らない。
刀鍛冶の里より一層、巧妙に隠されている場所だ。
その本邸に呼ばれることなど、柱であっても未だ嘗てないことだった。
杏は童磨に姉たちを殺された後に鬼殺隊士になるまでの1年半程の間、産屋敷邸で過ごしていた。
そのときでさえ、今いる屋敷にいた。
産屋敷家の子どもたちと家族のように育った杏でさえ、本邸は見たことすらない。
そんな場所に呼ばれる。
目には見えないが杏も、悲鳴嶼も鬼と対峙したときとはまた違う緊張感を感じていた。