第23章 オトメゴコロ。
眉を下げながら笑顔を浮かべる杏。
しのぶの鬼に対する憎悪をよく知っているだけに共同研究の環境がどれほどしのぶにとって負担が大きかったかがわかる。
し「えぇ、それはもう。始めたばかりの頃は珠世さんは怯えていらっしゃるし、愈史郎さんは威嚇してくるし、私も突っぱねていましたのでなかなか進みませんでした。」
しのぶは肩をすくめ、当時を思い出し苦笑いを零す。
し「途中で…お話をしたんです。
彼女のことを聞きました。
鬼の珠世さんではなく、珠世さん自身の話を。
思うところはまだありますが、多分…これが許すということなんでしょうね。」
胸元に手をやりながらそう話すしのぶに杏は小さく微笑む。
『しのぶさんは強いですね。
鬼を許す…難しいことです。私はまだ…姉さんたちの命を奪った鬼という存在が許せないです。』
そう言ってグッ、と拳を握る杏を見てしのぶは眉を下げる。
し「私もそうですよ。禰豆子さんや愈史郎さんは人を喰ってないですし、人を喰っている鬼の中で許せているのは珠世さんだけです。姉さんや両親、継子たちを殺した鬼を許すことなどできるわけもありません。」
俯く杏に言っていることとは正反対に優しい声をかけるしのぶ。