第4章 柱合裁判
杏(確かしのぶさんが引き取ってたから蝶屋敷にいるってことよね。蝶屋敷なら近いうちに行くだろうし、まだ大丈夫ね。)
上を向き、少し考え込んで湯船から上がる。
いつもならもう少しゆっくり入るが、明日は来客の予定があるためあまりゆっくりはしていられないのだ。
サッと身体から水分を拭き取り、寝巻き用の浴衣に袖を通す。
髪の水分を粗方拭き取ると、棚から椿油を取り出し長い髪に塗りこむ。
羽織を纏い、縁側へと向かう。
お風呂上がりの日課だ。
縁側から見える庭は日本庭園のように砂利が敷き詰められ、覗けば錦鯉の泳いでいる池があり、池の隣には大きくて立派な桜の木が植えてあった。
お館様から柱になったお祝いとして頂いた特別な桜の木で1年中、ずっと花を咲かせている。
杏は縁側に座り、桜の木をじっと見つめる。
このようにお風呂上がりに桜の木を見上げているといつも彼女の脳内にある歌のメロディが流れてくる。
『lu〜〜♪la〜la〜〜♪〜』
歌詞はわからない。
なんの歌かもわからない。