第20章 事件
不「音白、こっちを見ろ。」
そう言って俯き、目を瞑っている杏の顔を無理やり上げさせる不死川。
恐る恐る目を開けると、視界には不死川のみが映る。
不「ここにいる奴らは誰もお前に手を出さない。
もし出してこようものなら俺や胡蝶が叩き出す。」
『不死川さん…。』
し「そうですよ、杏さん。
この病室には私の許可がない者は入れません。」
優しく微笑むしのぶ。
『…はい。ありがとうございます。
彼は物陰に隠れていた私たちを見つけて腕を引いてきました。そのときに倒れ込んだ動けない私の手を縛って、跨がってきました。そのとき、不死川さんが助けに来てくれたんです。』
し「そうだったんですね…。
話してくれてありがとうございます。
味噌汁の器から薬も検出されました。」
しのぶは書き留めた紙を丁寧に折り、羽織の袂に入れる。
し「これをお館様にお送りします。
あとはお館様が何とかしてくださるでしょう。」
『ありがとうございます、しのぶさん。』
し「いえ。さぁ、ゆっくり休んでいってくださいね。祈里さんと音羽さんがもうすぐで悲鳴嶼さんの稽古が終えるそうですから、迎えに来ていただきましょう。」