第20章 事件
微かに震える身体。
杏(もう大丈夫…落ち着いて。
…こんなことくらいで、情けない…。)
ぎゅっ、と目を瞑り、大きく息を吐いていると、震える手を不死川が握ってくれた。
その温もりを感じた途端、身体の震えが止まる。
杏(…震えが、止まった…??)
その事実に驚きつつも、落ち着きを取り戻したため再び話し始める。
『何とか隙を見て一発蹴りを入れてその場から小鳥遊さんを連れて逃げ出しました。薬の影響で力が入らなくてあまり威力がでなかったので屋敷の外に出たらすぐに追いつかれるだろうと考えて屋敷の中で身を潜めることにしました。それで一応武器もあるあの部屋に逃げ込みました。』
し「そうですね。」
しのぶが頷いてくれるのを確認して話を続ける。
『外側から開けられないように衝立もして息を潜めていると暫くしてそこに隠れているのがバレました。これは私の考えが甘かったのですが、隊士ではなく隠なので戸を力尽くで開けることはできないと考えていたんです。でもそれができたらしく戸を蹴破られました。』
そのとき、あのときのニヤァ、と笑う隠の顔が脳裏に甦り、思わずぎゅっ、と目を瞑る。