第20章 事件
『屋敷に戻ると小鳥遊さんはいつも出迎えてくれていました。しかし、声をかけても返事をしてくれなくて…。隠の覆面もあって顔は見れていませんでした。』
杏が話す当時の状況をしのぶは手元の紙にサラサラと書いていく。
『何か彼の気に障ることでもしてしまったかな、と思いつつも時間もなかったのでいつも通り湯浴みを済ませて居間に行きました。そこには隠の姿はなかったのですが、いつも通り夕餉があったので食べ始めました。いつも通り最初に味噌汁を飲んだところで、押し入れから物音が聞こえてきました。』
し「押し入れから??」
『はい。猫でも入り込んだのかと思って押し入れを開けると、意識のない、手足を拘束され、縄を噛まされた状態の小鳥遊さんが倒れ込んできました。』
し「と、なると小鳥遊さんは杏さんが屋敷に戻る前には押し入れに入れられていたんですね。」
しのぶの考察に杏も頷く。
『恐らくそうだと思います。小鳥遊さんの状態を確認していると…あの隠の方がでてきました。状況から彼が小鳥遊さんに何かしたのだろうと考え、警戒していると突然、身体に力が入らなくなりました。そのとき、サクラが帰ってきていたのを見つけて物音を立ててあの子を飛ばせました。』